投資マンションの営業をしていると、たまに「これって自分で住んでもいいんですか?」という質問を受ける場合があります。
結論から言うと「基本的にNGだけど状況によってはOK」です。
では、なぜNGなのか?また、住んでもOKな場合はどのような場合なのか?
順番に見ていきましょう。
- 投資用ローンから居住用ローンに切り替えなければならない
- 部屋の広さが30㎡未満だと居住用ローンが使えない
- ローン完済でワンルームマンションへの居住も可能
- 投資用ワンルームに居住する際の注意点
- 住みたいときに住めない可能性が高い
- 節税できなくなる
- 居住用の「住宅ローン取得控除」が扱えない
- 賃貸管理の業務委託契約を解除しなければならない
- 家賃収入が無くなる
- ワンルームに自分が住むのは非常に効率が良い
- 投資用と居住用では設備や仕様が違う
- ワンルームマンションは投資目的以外の使用方法もある
投資用ローンから居住用ローンに切り替えなければならない
投資用のワンルームマンションを購入する場合、「投資用として貸しに出す」条件で金融機関から投資用ローンの融資を受けます。
もし、自分自身がそのお部屋に入居するとなれば、投資用ではなく居住用となります。
つまり、使用の目的が変わってくるのです。
昨今、居住用の住宅ローンで投資物件を購入する「なんちゃって」が社会問題となっいます。
この「なんちゃって」は、居住用としての住宅ローンで投資物件を購入するという悪質な行為です。
金融機関に対しては投資物件としてではなく、あくまで自分自身が居住する自宅と偽り居住用の融資を引いて、決済が終了したら賃貸して投資物件としてしまうのです。
これは金融機関を欺く行為ですから、絶対にやってはいけません。
- 居住用物件は居住用の住宅ローン
- 投資用物件は投資用の住宅ローン
で目的が全く異なりますから、融資審査や基準も異なります。
金融機関の立場を考えれば、お金を貸し出した対象物件を当初に定めた目的以外で使用されると困ってしまう訳です。
自分自身が物件に居住するならば、投資用ではなくなりますので「居住用ローン」に切り替えなければなりません。
しかしその居住用ローンへの切り替えに際して以下のような大きな問題点が生じます。
部屋の広さが30㎡未満だと居住用ローンが使えない
居住用の住宅ローンの融資条件として、最も大きなポイントとなるのが「お部屋の広さ」です。
銀行によっても異なりますが、基本的に「30㎡以上」の広さがないと居住用ローンを使うことはできません。
投資用のワンルームマンションは基本的に18~25㎡程度のものがほとんどです。
よって、その時点で居住用の住宅ローンの基準を満たしていないのです。
なので、ワンルームマンションを投資用として購入し、そこに将来自分が住むとなれば居住用ローンへの切り替えが必要となりますが、「お部屋の広さ制限(30㎡以上)」に引っかかってしまい、ローンの切り替えができなくなってしまうのです。
よって、投資用のワンルームマンションを投資用ローンを組んで購入した場合、それを居住用とするのはかなり難しいと言えます。
ローン完済でワンルームマンションへの居住も可能
投資ワンルームマンションを投資用のローンを組んで購入した場合、ローン残債がある以上は基本的に居住用として住むことはできません。
しかし、そもそもローンが無ければ、そのお部屋は誰が使おうが自由です。
よって、ワンルームを購入して将来的に住むことを考えているのならば、早い段階でローンを全額完済してしまうことをお勧めいたします。
もしくは現金一括で購入しても問題ありません。
ローンが無くなれば金融機関との関係性も無くなります。
投資用ワンルームに居住する際の注意点
住みたいときに住めない可能性が高い
その理由を今からお話ししていきますね。
投資マンションは、そもそも貸して家賃収入を得るためのマンションです。
なので、よほど立地が悪くない限りはほとんどの期間入居者がついている状況が想定されます。
なので、購入して10年後に「自分が入居しよう!」と考えたとしますよね?
もし、そのタイミングでその投資物件がたまたま空室であれば居住用として住むことは可能です。
ただし、入居者がいる場合にはそうはいきません。
「じゃあ出て行ってもらえばいいじゃん!」
と思うかもしれませんが、「普通賃貸借契約」で入居されている入居者さんをオーナー都合で退去させるのは非常に難しいのです。
ではどうすれば入居者にトラブルなく出て行ってもらえるのでしょうか?
法律上の話をすると「借主の権利は非常に強く、貸主の権利は非常に弱い」のです。
借地借家法に基づくと「貸主からの解約には正当事由」が必要となっています。
正当事由ってなんだ??
非常にあいまいな言葉ですが、退去を要求する事由が「売りたいから!」とか「単に自分が住みたいから!」とか、そういった事由では正当事由にはならないと考えてください。
「あなたに他に家がなくて住むところがどこにもないからそこに住みたい」というような、いわば「どうしようもない事由」であれば、正当事由として認められるかもしれません。
このように強い理由がない限りは入居者を退去させることは容易ではありません。
そのような理由が無くて、どうしても退去してもらいたい場合は
- 引っ越し費用の負担
- 立ち退き費用の負担
など、金銭で当事者と交渉し解決しなければなりません。
このように「普通賃貸借契約」において入居者を追い出すことは簡単ではないことが分かると思います。
例えば、自分自身が住みたい時期が事前にわかっている場合は、「定期借家契約」を入居者と結ぶことで入居者の居住期間満了で自動的に契約を終了させることができます。
つまり、引っ越し費用や立ち退き費用の負担なく入居者に出て行ってもらうことが事実上可能となるのです。
節税できなくなる
ワンルームマンションを投資用で購入すると、確定申告をすることができます。
減価償却費や借入金利子などの必要経費を算入することで、購入当初は若干の節税効果が見込めます。
しかし、これはあくまで「投資用」として物件を購入した場合のみです。
「居住用」として物件を使用する場合は必要経費の参入などはできません。
よって節税にはならなくなります。
購入後すぐに自分自身で住んでしまうと節税の恩恵を受けられなくなってしまうので注意してください。
居住用の「住宅ローン取得控除」が扱えない
住宅ローン控除とは、「住宅借入金等特別控除」と言われる制度のことです。
居住用の自宅をローンを組んで購入した場合に、一定割合の金額が所得税から控除されます。
つまり、自宅をローンを組んで購入すると、住宅借入金等特別控除が適用され、購入者の経済的な負担を軽減できる仕組みです。
住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、令和3年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときにおいて、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。
国税庁HPより
住宅ローンを使えば住宅ローン控除が受けられると思われがちですが、投資用マンションではローンを組んでも住宅ローン取得控除はつかうことはできません。
また、住宅ローン取得控除が適用される条件は以下を満たした場合です。
- 実際に住んでいること
- 年間所得が3,000万円以下であること
- 床面積が50㎡以上あること
- 10年以上の借入期間であること
よって、もし仮に投資用のワンルームを居住用ローンを使って購入できたとしても、平米などの規制により、そもそも住宅ローン取得控除は使えません。
賃貸管理の業務委託契約を解除しなければならない
投資用のワンルームマンションを購入する場合は賃貸管理を管理会社に業務委託します。
自分自身がお部屋に住むとなれば、賃貸で貸し出すわけではないので、賃貸管理会社の業務委託契約を解除しなければならなくなります。
管理の契約内容にもよりますが、解約時に違約金を請求されることも少なくありません。
また、ほとんどの管理会社で3~6カ月前までにオーナーから管理を解約する旨を事前通告する必要があります。
よって、賃貸管理会社との業務委託契約を解約する場合は事前にしっかりと解約条件を把握しておきましょう。
家賃収入が無くなる
「年金対策」を目的に投資用のワンルームマンションを購入される方は非常に多いです。
現役段階で投資用物件を購入し、ローン完済後(老後)に物件から取れる賃貸収入を年金代わりに受け取るのです。
しかし、自分が購入した投資用物件に自分自身が住むとなれば、将来的な家賃収入を得ることはできません。
そうなると、当初の「年金対策」としての目的を果たせなくなってしまうので、ライフプランニングの見直しが必要となります。
ワンルームに自分が住むのは非常に効率が良い
賃貸の常識として、お部屋が狭くなればなるほど1㎡当たりの賃料単価は高くなる傾向にあります。
わかりやすいように図を作成しました。
お部屋が狭くなるほど、賃料の単価が高くなるということです。
利回りも低いです。
利回りが低い=価格が高い
ということです。
ワンルームマンションはファミリーマンションに比べてそもそもの1㎡当たりの価格も家賃も高いので、自分自身が住むと考えると少し割高な自宅となってしまうと言えます。
ここまで聞くと、ワンルームは居住用で買わないほうがいいのでは?となってしましますが、そうではありません。
独身の方で、現状ワンルームマンションに賃貸で家賃を払って住んでいる方からすると一般的に割高な賃料を毎月支払っていることになります。
しかし、ワンルームマンションを自宅として購入してしまえば将来貸しに出せる自分自身の資産となりますので、多少毎月の支払が割高だったとしても長期的な視点で見れば十分にメリットがあると言えます。
投資用と居住用では設備や仕様が違う
投資用物件はあくまで、賃貸で住む為の仮住まいが前提のお部屋です。
よって、設備やグレードに関しても、投資効率を重視しているので最低限の設備となっております。
それに比べると、居住用マンションなどは、その物件に生涯住む目的で買われるわけですから、居住性が異なります。
一時的に住む賃貸物件と生涯住む居住用物件では、目的が異なる為、「住みごこち」には大きな差が生まれてきます。
よって、投資用と居住用はごっちゃにして考えず、それぞれ目的に合った物件選びを心がけましょう。
ワンルームマンションは投資目的以外の使用方法もある
ローンを完済して実際に自分で住んでいるオーナーさんもいらっしゃいますし、大学で都心に上京してきたお子様に貸し出されているオーナーも多数いらっしゃいます。
ワンルームマンションは様々な仕様の用途がありますので、単純に資産運用以外の視点で見てみるのもありです。
しかし、あくまでワンルームマンション投資は貸して家賃収入を得るのが目的です。
目的がずれると物件選びがずれてきます。
物件選びがずれると、そもそもの投資としての目的を果たすことができないので、立地と融資には最新の注意を払ってマンション投資を検討しましょう。